冷めない熱で溶かして、それから。


「殴るのは……ダメだよ」

 松野くんが私のせいで停学とか処分されるなんて、ぜったいに嫌。


「話してくれてありがとうございます。先輩が男を拒否してる理由がわかって嬉しいです」

「嬉しい……?」


 簡単に騙されるような女だって軽蔑したりしない……?

 話したあとだったけれど、今さら不安になる。


「だって、過去の先輩を知れたから。俺の知らない先輩が知れて、もっと近づけた気がします」

 松野くんは私と額をくっつける。
 不安がうそのように消え、鼓動が速くなった。

 松野くんのひと言ひと言に感情が振り回される。


「それなのに、近づけば近づくほど欲が出ます。もっとたくさん、俺の知らない先輩を見たいって」


 あっ、これはかなり危ないかもしれない……。
 どこか色っぽく、誘うような笑みを浮かべる松野くん。

 また、松野くんのペースに呑まれてしまいそう。

< 135 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop