冷めない熱で溶かして、それから。


「あれ……返さなくていいの?」

 明らかにスルーしていた松野くんを見て、思わず口に出してしまう。


「もしかして見ました?」

「あっ……ご、ごめんなさい!わざとじゃなくて……偶然目に入ったというか」

「いいですよ、どうでもいい連絡だったんで」
「どうでもいい……?」


 誘いの連絡がどうでもいいって……そういえば、すっかり忘れていたけれど、初めて松野くんと会ったときも今みたいに冷たい印象だった。


「向こうも断られるってわかってんのに連絡してくるんで面倒です。正直、早く俺には愛しくてかわいい彼女がいるって伝えたいくらいです」

「……っ」

 そんなにも恥ずかしいことをさらっと言ってしまうなんて。
 けれど松野くんの言葉のおかげで、嫌な感情がまるで嘘のように消えていく。

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