冷めない熱で溶かして、それから。


「ま、松野くん……?」

 距離が近くて、ついドキッとしてしまう。
 男の人とこの距離は……中学生以来で慣れない。

 それもいい思い出だったはずが、忘れたいほど嫌な思い出へと変わってしまった過去の記憶だ。


「着いたら起こしてください。今度はうるさいなんて絶対言わないんで……」

「えっ……寝るの?」


 私の問いかけに答えることなく、松野くんはすぐに静かになった。

 小さな寝息が聞こえてきて、本当に眠ってしまったのだとわかった。


 さすがにここまで無理して起きる必要はなかったんじゃ……?と思ったけれど、遅刻しがちらしい松野くんが変わろうとしているのだ。

 ここは応援してあげないと。

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