冷めない熱で溶かして、それから。
◇
「あははっ、それで睨まれちゃったの?朝から災難だったね」
「笑いごとじゃないよ……本当に怖かったぁ」
朝のホームルームが始まる前まで、私は友達の前田璃花子ちゃんと話していた。
そのときに早速朝の話をすると、璃花子ちゃんに笑われてしまう。
あのあと、男の人はそれ以上なにも言うことなく、私より先に同じ駅で降りていた。
一瞬の出来事であのときは頭が真っ白になってしまったけれど、いまは恐怖心に襲われていた。
「でも確実に相手が悪いわ、それ。芽依が起こしてあげなかったら寝過ごしてたんだよ?」
「うん……だから後悔はしてないけど」
「もーお人好しなんだから」
偉い偉いと言って璃花子ちゃんに頭を撫でられるけれど、完全に子供扱いされている気がする。
璃花子ちゃんは姉御肌で、クラスのみんなの頼れる存在だった。
私もそんなしっかり者の璃花子ちゃんに頼ってしまいがちで、まるで本当にお姉ちゃんのようだ。