冷めない熱で溶かして、それから。
「そこまでして早起きする必要なんてないんだよ」
「……心地いいんです、この時間が」
「えっ?」
「だからたぶん、やめられる気がしません」
松野くんは目を細めて笑う。
ひどく優しい眼差しを私に向けていた。
松野くんって、こんなふうに優しく温かな笑みを浮かべるんだ……。
またひとつ、私の知らない松野くんの顔が見れた気がした。
まあ、松野くんが大丈夫って言うのなら、無理に止める必要はないの……かな。
松野くんと一緒に登校するこの時間は、嫌じゃない。
むしろひとりで登校していたときより、楽しかった。
松野くんは心地いいと言っていたけれど、私と同じ気持ちなのかもしれない。
なんて、このとき無理にでも止めなかったことで、私はあとで後悔することになる。