冷めない熱で溶かして、それから。


「誰か気になるね、その先輩。いたら教えてね、あたしが文句言ってあげるから」

「そこまでしなくて大丈夫だよ……!」


 さすがにそこまで求めていない。
 それに相手は先輩だ、怒りを買ってしまえばそれこそ何をされるかわからない。

 私のせいで璃花子ちゃんを危険な目に遭わせるなんて嫌だ。


「でも同じ電車だってことは、また会うかもしれないよね?」

「あっ……ほんとだ。だけど今まで会ったことなかったよ」


 私は基本的に今日と同じ時間の電車に乗っている。
 かれこれ一年半くらい経つけれど、今までその先輩と会ったことはなかった。


「それこそ謎だね」
「うん……」

「もし何かされたらすぐに言うんだよ?芽依は気弱で可愛い女の子なんだから、気をつけてね」

「そこまで子供扱いしなくても……!」


 心配してくれるのは嬉しいけれど、まるで子供のように扱われている気分になる。

< 5 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop