冷めない熱で溶かして、それから。
「先輩、もう俺のこと避けないでくださいね?」
「い、嫌です」
避けたところで、無駄だという気はするけれど。
今日みたいに待ち伏せされたり、松野くんなら朝も、もう一本早い電車に乗ろうとしそうだ。
「……あ」
そうだ、松野くんは昨日体調を崩して倒れているのだ。
それなのに、また無理して早起きされては同じことの繰り返しになってしまう。
「……松野くん」
「なんですか?」
「ひとつ、条件を呑んでくれたら松野くんのこと避けない……ように、頑張ります」
避けないと断言できないのは、前のような関係に戻れる自信がなかったからだ。
「条件、ですか?わかりました。教えてください」
松野くんは、条件を聞いて少しおどろいていたけれど、すぐに頷き了承してくれた。
そのときの松野くんの微笑みは、今までで一番嬉しそうで温かく思えた。