冷めない熱で溶かして、それから。


「失礼します」

 返事が返ってくることはないけれど、思わずそう言ってしまう。
 中は電気がついていなくて薄暗い。

「ここなら安心して着替えられますね」

 松野くんは満足そうに笑っているけれど……私、松野くんがいるこの状況で着替えないといけないの?


「あの、松野くん……その、松野くんの前で着替えるのはちょっと……」

「別に俺は気にしませんよ」
「私が気になるの!」


 松野くんの前で着替えるなんて恥ずかしいに決まってる。
 そう思い、つい大きな声をあげてしまった。


「そうですか……わかりました。背中向けときますね」

 松野くん、いま少し残念そうな顔をしてた。
 いったい何を考えていたんだろう。

 大人びて見える松野くんも、そういうことに興味があるんだなと思いながら、私はようやく制服に着替えられた。


「松野くん、着替え終わりました!」

 執事服は綺麗にたたみ、これでとりあえず一安心だ。

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