冷めない熱で溶かして、それから。


「先輩、こっちに座ってください」

 松野くんに誘導され、私は壁にもたれる形で彼のとなりに腰をおろす。

 ちょうどそのタイミングで、私のスマホが音を立てた。


「あっ、璃花子ちゃんからだ!」

 スマホを確認すると、急にいなくなった私を心配する璃花子ちゃんからのメッセージだった。

 先に着替えて、少し休憩していると慌てて返す。


「大丈夫そうですか?」

「えっ、あ、うん!少し休憩してるねって送ったから、たぶん大丈夫かな」

「そうですか、よかったです」
「よかった?」

 松野くんがホッとしたような顔をしたため、思わず聞き返してしまう。


「一瞬、先輩が友達のもとに戻るのかなって思ったんで……俺を選んでくれたみたいでよかったです」

「でも少しだけだよ……?」


 どこか嬉しそうに話す松野くんに、念のため少しだけだと伝えておく。

 そうじゃないとずっとここにいてしまいそうな気がした。


「もちろんです。先輩の時間が許す限り、ここにいてください」

 その言い方はズルい気がする……。
 “少しだけ”の具体的な時間は私が決めろってことだよね?

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