冷めない熱で溶かして、それから。


「松野くんは戻らなくていいの?」
「先輩が戻るときに俺も戻ります」

「みんな松野くんを待ってたりしないの?早く戻ったほうが……」

 スッと、松野くんの手が伸びてきて、指が私の唇に触れる。

 まるでそれ以上は喋るなと言うような行動に、私も口を閉じるほかなかった。


「さっそく戻るような話をするのはさすがに早いですよ、先輩。まだぜんぜん満たせてないのに」

 松野くんが、空いてる手で私の肩を抱き寄せる。
 ぐっと距離が縮まる中、松野くんはゆっくりと私の唇をなぞった。


「……っ」

 こんな、いきなり“後輩”から“男の人”になるなんてズルい。

 突然のことに体が反応できなくて、抵抗ひとつできそうにない……と、胸がドキドキしているのを隠すように心の中で言い訳を並べる。


「こっち向いてください、先輩」
「む、無理です……ひゃっ⁉︎」

 突然、松野くんに耳元で息を吹きかけられる。
 くすぐったくて体が大きく跳ね、耳元を手で覆いながらとっさに松野くんのほうを向いた。

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