冷めない熱で溶かして、それから。


「急になにするの⁉︎」
「先輩がこっち見てくれないから」

「だからってこんな……っ」
「こんな?」

 私が顔を背けないようにか、松野くんに額をくっつけられる。

 松野くんの整った顔がすぐそこにあって、視線だけでも逸らす。


 自分の心臓の音がうるさい。
 顔も熱くなって、ぜったいに赤くなってると思う。

 心が掻き乱される。
 松野くんの行動ひとつひとつに振り回される。
 

「あーあ、そんな顔されたら肯定だと受け取ってしまいますよ」

「え……んっ」


 なんとなく、そんな気はしていた。
 顔をこんなにも近づけられて、なにもせずに終わるなんて考えてはいなかった。

 唇をそっと重ねられる。
 優しいキスに、気づけば目を閉じて受け入れていた。

< 99 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop