契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 もっとしたい。もっとしてほしい、なんて思うのはおかしいだろうか。

 ふと重なったままになった唇が緩く美冬の下唇を喰むから、美冬はくすくすっ、と笑ってしまった。

「んー? どうした?」
「だって……食べられちゃうかと思って」
「食べられるんだよ、今から」

 恥ずかしいよ!この人こんなに甘やかな人だった?

「よし!」
 そう言って槙野は美冬をソファから抱き上げた。
「ちょっ……重いって」

「言っただろ。さっきのはほんの冗談。重くないよ。それより暴れるな。落とすぞ」
 それを聞いた美冬はぎゅうっと槙野に抱きつく。
 落とされてはかなわない。

「今からお前のこと抱くから。乱暴にはしない。優しくする。美冬がもっとたくさんしたいって思うくらいに」

 別に美冬だって後生大事に取っておいたという訳ではないのだ。

 中学も高校も女子校だったし、大学のときはすでにミルヴェイユに片足を入れていて、交際や合コンよりも会社の方が楽しかった。
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