契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 入社してからはもちろん仕事に夢中で、彼氏なんて作っている暇はなかったのだ。

 だからこそ、こうなってしまって、契約結婚なんてするハメになっている。

 それでも、その初めての相手がとてもドキドキする人で、今日一日だって何度も新しいところを発見して魅力があって尊敬できて、そんな人ならばむしろ願ったりなのではないだろうか。

 もちろん怖い。
 怖いけれど、槙野は絶対酷いことはしない。

 それは美冬も断言できるのだから。
それについては美冬は槙野のことを信頼している。

 美冬をそっと寝室のベッドに降ろした槙野は体重をかけないように、優しく美冬に覆いかぶさって、そっと頬を撫でた。

「美冬、俺のことは名前で呼べよ。知っているよな? 夫になるんだし?」

 優しく触れる指にも、その低くて甘い声にも美冬はどきんとして言葉に詰まる。

「祐輔……さん」
「さんは要らない」
「ゆ、祐輔?」

 はっ……とため息のような声がもれて、美冬は槙野にきゅうっと抱きしめられた。

「やべ……。お前ってなんで本当にそんなに顔だけは可愛いの」
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