契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
──煽るな、なんて。……煽られているのは私の方なのに。

 槙野はベストを脱いでベッドの下に落とし、シュルっと音をさせてネクタイを首から外す。
 そのままシャツの手首のボタンを外して、襟元を緩めた。

 そんな仕草の一つ一つが野性的なのにエレガントで慣れない美冬はくらくらしてしまう。
 すごく、慣れてない?

 妖艶で男性的で、野性的な美しさがあって……。
(これは絶対モテるひとだ!!)

「なんだ? なに考えてる?」
「いや、祐輔ってモテそうだなーって……」

 くすっと余裕のような表情で笑われて顎を指でくすぐられる。

「モテてももうお前だけだろ。そういう契約じゃないのか」
 お前だけなんて言われてきゅんとしたけど、確かにそれは契約だった。

「そうね」
「美冬もだぞ。もう、俺だけしか美冬に触れることは許さない」

──契約……だから。

 分かっていた。分かっていて署名したのだ。それでいいと思ったし、その方がいいと思ったから。
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