契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 なのに今、何だか棘のように心になにか引っかかっているような気がするのはどうしてだろう。

 契約なんて言われて美冬も割り切ってしまえばいいのに、チクリと痛むなにかがあるのは。

──契約でも可愛いとか、滾るとか言ったり、優しくするとか良くするとか言うんだ。俺だけとか……。

 唇が重なると胸がドキドキする。
 気持ちよくてきゅんとするのだ。

 ベッドの上で重ねてくれている手も、情熱的に美冬の口の中をまさぐるその舌も、柔らかく美冬を傷つけないように触れる手も美冬は全てに翻弄されてしまうのに。

 脱げかけた服の隙間から見えている槙野の肌に、美冬の鼓動の音はさらに大きくなる。

綺麗に筋肉が薄らとついていて、引き締まった腹筋がシャツの隙間からちらりと見えていて美冬はどうしたらいいのか分からなくなった。

──男の人、なんだ……。

 急に恥ずかしくなってつい、美冬は自分の身体を隠したくなってしまった。
「ん?どうした?」
 隠したその手を握られて腕を開かれる。

 手首から、肘の裏、二の腕までキスをされて服を着れば見えないところは強く吸われた。
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