契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それでも、夫婦になるのだし避けて通るつもりはない。

「それに、慣れていないから祐輔を満足させられないかも」
「美冬が? 俺を満足させるの? へーえ……そのままでいろよ。物慣れない方が滾るってこともある」

 槙野がそっと美冬の頭を撫でる。
 その瞳は先程までとは違って慈しむような優しい瞳だった。

「美冬は意外と気遣いする方だよな。そういうところもいいなって思う。怖かったら最後まではしない。でも、俺は美冬に触れたい」
「でも、それじゃ……」

「美冬が感じてくれたら、すげー満足すると思うけど」
 処女を俺のテクニックでガンガンイカせるって良くない?とにやりと笑うので、美冬はまたぺしっと肩を叩く。

「そうやってすぐからかって!」
 そうしたら真顔でその手を掴まれた。
「なぁ? いつもそんな風に気軽に男に触れんの?」
「え?」

 美冬は首を傾げる。
 叩きたくなるくらい腹が立つのは槙野だけだと思うし、そう言えば他の誰にも美冬はそんなことはしたことがなかった。
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