契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 着たままでいることによって、逆にさらに淫靡さを増しただけのようにも思えたのだ。
 ずっと触れられて快感だけ引き出されるのはつらい。

 どこにも逃せない熱だけが身体の中をぐるぐるしていて、もどかしくて、美冬にはどうしたらいいのか分からないのだ。

「や……」
「ん? やだ?」
「やだ……」

 こんな風に快楽を引き出されたことなんてなくて、どうすればいいか分からなくて、美冬は泣けてきてしまった。

「おい、泣くな美冬。ごめん。俺がいじめすぎた」
「煽ってないもん……それになんか思ったよりえっちいし、そんなおっきいのなんて絶対はいんないし、祐輔がいやらしすぎるよー」

「褒めてんのか貶してんのかお前は……」
「褒めてない。貶してもないけど」
「ほら、こっちこい」

 それでも槙野にそう言われて腕を広げられたら美冬はその腕の中に入ってしまうのだ。
「そんなに嫌か?」

 包み込むように抱擁されるのも、優しく囁かれるのも悪くはない。むしろもたれたくなってしまうくらいなのに。

「嫌じゃないよ。ごめんね慣れなくて。でも……」
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