契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
たとえ、美冬が自分に対して気持ちがなくても。

 シャワーを浴びに行こうと思っていた槙野は美冬がぎゅっと抱きついてくるので、諦めた。
 胸の中の美冬を抱き返す。

「全く……俺に我慢をさせるなんて、本当にお前くらいだぞ」
 槙野はシャワーを諦めて胸の中の美冬を抱き直し、軽く目を閉じた。
 悪い気分ではなかった。

 嫌ではなかったと言っていたのだし、慣れてくればそのうちできるようになる。
 仕事があれだけできる美冬なのだ、問題はないだろう、というのが槙野の判断だった。

◇◇◇

「んー……」
 美冬が目を開けると見覚えのない部屋だ。

 いや、正確には見覚えはある。昨日の夜寝かされて、えっちなことをしそうになった槙野のベッドだ。
 覚悟はしていたはずなのに、気持ちよすぎておかしくなるかと思った。

──ていうか、最初からあんなにおかしくなりそうになるものなの?すっごく、すっごくいやらしかったわ……。

 それに槙野の槙野に触ってしまった。初めて触った男性に驚いてこんなの無理!と怖くなってしまったのだが、槙野は優しくしてくれた。
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