契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 横に来た美冬に槙野はパン切りナイフとカッティングボードとバゲットを渡す。

 受け取った美冬は大きさを槙野に聞きながら、パンをカットして、トースターに入れた。

 その間にも槙野は慣れた様子でボールに玉子を割入れ鼻歌混じりにカシャカシャと菜箸で掻き回している。

「すごいわね。祐輔はお料理得意なの?」
「得意ではないな。普通のもんを普通に作れるだけ。だいたいパンを焼いたり、サラダを準備したりは料理できなくても簡単だろう」
「そっか、そうよね」

 すでに盛り付けされている皿には厚切りのベーコンや、ソーセージも盛られている。

 さすが肉食、と美冬は感心した。
その時トースターからチン!と可愛らしい音がしたので、美冬は中からバゲットを取り出し皿に乗せる。

 二人でテーブルセットして、ダイニングの椅子に座りいただきます、と手を合わせる。
「美冬、ミルクと砂糖は?」
「あ、欲しいかも」
「ん」

 シュガーポットには紙で包まれている角砂糖が入っていて、ミルクも小さいピッチャーで出てきた。
 そのセンスはああ、この人にはちゃんとお付き合いしていた彼女がいたんだろうな、と思わせる。
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