契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 担当者は店頭から美冬に合いそうで、ダイヤモンドのついた指輪をいくつか持ってきた。

 その中で二人でまた手ごろなものを選ぶ。
 もう美冬は現実感がなくなってきた。

 最終的に槙野が選んだものをその場でこのままつけて帰るということになったのだ。

 精算の時に槙野が店員に黒いカードを渡しているのを美冬は見る。

(なるほどー、センチュリオンホルダーな訳ね)

 それは通称ブラックカードと呼ばれるもので、億の決済すら可能なカードだ。
 作りたいから作れるというものではなくカード会社からのインビテーション、つまり招待がないと作ることはできない。

 センチュリオンと呼ばれるそのカードを持つ人をセンチュリオンホルダーと呼ぶ。

 このショップの婚約指輪にはもちろん値札などついていないが、美冬の知識では300万超のはずだ。
 先程、首輪代わりにと購入した指輪は約100万円。

──ポンとそれを買い与えちゃうんだ。
 美冬が自分のものだと主張するために。

 指に嵌められた指輪を手を広げてもう一度美冬は見てみる。
 キラキラと指を飾っていて……言うなれば、主張がすごい。
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