契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それでもとても綺麗だったし、やはり嬉しい。
「似合うぞ」
「ありがとう」

 美冬のその言葉に対して、槙野は嬉しそうな笑顔になった。
「気に入ったのなら良かった」
「指輪だけど、首輪なのかぁ。面白いわね」

 そして美冬は首を傾げた。
 契約……よね?


 その後、美冬は槙野に頼んで車をデパートに回してもらうことにする。

──よしっ!首輪を買ってあげる!

 美冬が槙野を連れて行ったのは特選フロアというラグジュアリーブランドの階だ。

 そこでいつもは祖父や父へのプレゼントを買っている美冬が若い男性を連れてきているのに、担当の紳士服の販売員が驚いていた。

「新作のネクタイを見せてもらっていい?」
「もちろんです。こちらの方にですか?」
「ええ。婚約者なの」

 美冬がキッパリそう言うと槙野は苦笑していた。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。椿様にはいつも大変お世話になっております。どうぞご贔屓に」
< 131 / 325 >

この作品をシェア

pagetop