契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ◇◇◇

 今日の槙野は紺地にストライプのスリーピースのスーツでシャツは淡いブルーだ。
 今つけているのは臙脂のネクタイでそれも似合っている。

「シルクのソリッドネクタイ、すごく素敵だわ」
 ラベンダーカラーのネクタイを手に取って美冬は槙野の襟元に当てる。

 そして「うん!」と頷くと鏡の前に槙野を引っ張っていった。
「見て?」

 光沢のあるシルク素材とラベンダーという一見華やかそうな色合いもソリッドという柄のないシンプルなデザインのため、紺色のスーツにとても映える。

 槙野は驚いた。
「いいな……」
「でしょ? すごく似合うわ」

 そう言って美冬は今槙野がつけているネクタイをシュルっと外してしまう。

 まさか、ネクタイを外すとは思わなくてつい美冬を見てしまうと、美冬はにこっと笑った。

 そして綺麗に槙野のシャツの襟元を立ててから丁寧にネクタイを結び始める。

「ネクタイの結び目に完璧なディンプル、くぼみのことよ、これを作るには練習が必要なの」

 槙野に説明しながら慣れた様子で美冬はネクタイを結んでいく。
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