契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「これ、付けて行ってくれる?」
 少しだけ恥ずかしげに上目遣いでおねだりされるのは悪くない。
 それに……

(美冬、男にネクタイを贈る意味分かっているのか?)

 槙野が把握しているのは『あなたに首ったけ・あなたを束縛したい・あなたを締め付けたい』などというちょっと重い愛情表現なのかと認識していた。

 確かに首に巻くもののプレゼントは意味深であり、エロティックだ。

 先ほど美冬の薬指に付けた指輪から、首輪と発言した槙野にも美冬は抵抗しなかった。
 それに対する回答がこれならば……。

──もしかして俺は首輪をつけ返された?なんて女だよ。

 槙野の口元には笑みが浮かんでしまう。
「つけてやるよ。お前の首輪」

 一瞬槙野を見てふふっといたずらっぽく笑った美冬は確かに一筋縄ではいかない雰囲気で、槙野はぞくっとした。
「うふふっ、ばれた?」

 本気で欲しい。
 今すぐにでも押し倒したいくらいに。
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