契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ◇◇◇

 槙野の運転で連れて行ってくれた自宅は、極普通の平屋の家で手入れはされているけれど、築年数も経っていそうな古い家だった。
 槙野の高級車を停めておくことは違和感しかないくらいだ。

「意外か?」
「うーん、まあ……」

 門扉の横の呼び鈴を押し
「ただいま」
と言うと、家からはーい!と声が聞こえた。

「にぎやかだから覚悟しろよ」
 そんな風に言う槙野は美冬が今まで見たことがないような顔をしている。
 穏やかな家族だけに見せる顔だ。

(なによ、そんな顔もできるなんてズルいわ)
「おかえりっ! お土産は?」

 玄関先に出てきた女の子は美冬より少し年下に見えた。
 妹だろうか、きりっとした目元が槙野に似ている。

「お前お土産優先かよ。お客さんなんだから挨拶しろ」
「わー可愛い人ですねぇ! お人形さんみたい。おかあさーん! お兄ちゃんが女の人連れて来たよ! こんにちは。どうぞ入って?」
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