契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 明るくて、とても元気だ。彼女の声で奥から人がたくさん出てくる。

「いらっしゃい。どうぞ」
と言ってくれた槙野の父は槙野にとても似ていて美冬は笑ってしまいそうになる。

「祐輔、お父様そっくりなのね。はじめまして。椿美冬と申します。祐輔さんと婚約させて頂いています」

 玄関の入り口で深く頭を下げた美冬に家族の目が集中していた。

「美冬さん! よろしくお願いします!」
「お兄ちゃん、どこで捕まえたのこんな人!」

 玄関で槙野家の家族に取り囲まれてしまう美冬である。

 わあ!大型犬に囲まれている気分だよ!
 槙野家は皆背が高いのだ。

 和室に通された美冬は今度は落ち着いた雰囲気にため息が出そうだ。

 サッシから見える縁側に日当たりのいい和室、床の間には掛け軸と花が飾られている。
 和室の真ん中に大きな一枚板の机が置いてあり、綺麗な座布団が置かれていた。

 美冬は槙野とその両親が座ったのを確認してそこにそっと膝をついて座る。
──正しく人をお迎えする家だわ。
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