契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 にぎわしいようにも感じるけれど、客人である美冬を歓迎してくれて、通された和室はきちんとされている。

 和室から見える庭もそれは美冬の実家ほど広くはないけれど、きちんと剪定(せんてい)が入って手入れされているのが分かる。

 なにもかもをとても大切にしていることが伝わる家だった。
 とても温かい雰囲気で、美冬は大好きになってしまったのだ。

「お庭、とても素敵です」
 美冬が槙野の父にそう言うと、父はとても嬉しそうな顔をした。

 その笑顔まで槙野に似ていて美冬は微笑ましくなる。

「本当? とても嬉しいよ」
「ハナミズキですね」
 庭に植えられている木を見て美冬は微笑んだ。

「そう。娘の叶愛(かなえ)が産まれた時植えたんだ」
「素敵ですね」
「ピンクと白なのよ。一応紅白でね」

 お茶を煎れながら母がそう説明してくれた。
 お茶菓子は美冬と槙野と二人で選んだ上生菓子だ。
 縁起の良い紅梅の練り切りである。
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