契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 先程までにぎわしく美冬を歓迎してくれていた兄妹達は部屋にはいない。

 それぞれ自室にいるのかもしれなかった。
 とても行き届いていて、落ち着く。

 槙野の父がお茶を一口飲んだ。
「で、祐輔、結婚するって?」
「うん。婚約者の椿美冬さん。美冬のところにもご挨拶に来週行ってくる」

「可愛らしいお嬢さんだが大丈夫だろうかね?」
「どうかな?」
 槙野は美冬の顔を覗き込む。

「うちの親はとっても喜んでます」
「そうなのか?」

「ええ。両親は私はもう結婚なんてしないものって思っていたのだもの」
「それはうちもそうだから大歓迎だけれど」
 父親が言葉を詰まらせるのに、槙野が口を開く。

「俺が一目惚れしたんだよ。会社に来た美冬に一目惚れして強引に結婚してくれって言った」
「それだけじゃないですよ」

 美冬がそう言うと、槙野は美冬の方を見る。槙野の両親も美冬の方を見た。

「祐輔さんはお仕事に関してはうちの祖父が認めるほどの人です。プライベートでは優しくて、よく気が付いてくれて、すごく甘やかしてくれます。強引なだけではなくて頼りがいもあって素敵な人です」
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