契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「そうか……」

 強引なだけではなかったと知って、父親は安心してくれたようだった。
 それに両親への挨拶はまだだが、祖父への挨拶を済ましているのにも一安心したようだ。

 槙野家では終始和やかな雰囲気で、わあっと囲まれてしまった兄妹にも後で紹介してもらった。

 槙野は三人兄妹の長男で、少し下に弟、さらにその下の末っ子が妹らしい。
 美冬はその弟と妹の中間くらいの年齢になる。

 弟は寡黙な人だったけれど、妹はお兄ちゃん大好きなのを隠しもしない明るい女性だった。

 槙野は家でも頼りがいのあるお兄さんと言う感じで、面倒見の良さはこの実家での振る舞いから身についたものなんだろうなあと美冬はしみじみと感じたのだった。

 一人っ子の美冬には兄妹がたくさんいる槙野が少し羨ましい。

 それを悟られたのかは分からないけれど、帰り際に槙野にポン、と頭を撫でられて
「お前の兄妹にもなるんだからな」
と言ってもらえたのが美冬には何だかとても嬉しかったのだ。

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