契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 照明がいろんな角度から明るく当たっている会場では美冬の指についている指輪がキラキラときらめいてしまうからだろう。

「目立つ?」
「まあ、かなり。ご結婚されるんですね、おめでとうございます。お客様からもご指摘あると思いますよ?」

「そうよね」
「どうします?」

 林のどうします?は何か聞かれた時にどのように答えたらいいのか、ということだろう。

「結婚しますと回答して大丈夫よ。披露宴もするつもりだし、その時はミルヴェイユで作成したドレスを着たいって思ってるから」
 美冬はそう言って笑顔で返した。

「社長!」
 林がぎゅうっと空いている方の美冬の手をつかむ。普段こんな風に感極まったりすることがない林だから美冬は驚いてしまった。

「ど、どうしたの?」
「さすがです! 自社のドレスを着るってキッパリ言って下さるなんて。だからついていこうって思うんですよ」

 そうか……自社のドレスを着る社長がいいと思ってもらえるんだ。

 美冬自身はミルヴェイユが好きだから当然と思っていたけれど、それが社員の助けになるならむしろ宣伝として使ってもらっても構わないと考える。
< 142 / 325 >

この作品をシェア

pagetop