契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
槙野(まきの)さん、この会社はとても価値のある会社です。女性にとっての憧れを具現化している。そうね……男性にはお分かりにならない感覚かもしれないわ」

木崎(きさき)さん、それはどうだろうか?」
 槙野(まきの)と呼ばれた目付きの悪い男性と、女性の間で火花のようなものが散ったのが見えたような気が美冬にはした。

 ──え、えーと?

 突然始まったその争いに美冬は戸惑う。すると、最初に口を開いた眼鏡の男性が口を挟んだ。

「ここでお話が決定するという訳ではない。椿(つばき)さん、他社のお話もお伺いして決定することなのですよ。ただ、槙野が言うことも間違ってはいない。お話をお伺いすると、今まで他社との提携などはされていないようだし。椿さん、相乗効果というものを少し考えてみてほしい」

 眼鏡の男性の穏やかな話し方に、美冬は頷いた。
「分かりました」
 
「次があれば、お会いしましょう」
 そう言われて美冬は背中が寒くなった。

 当たりは柔らかいけれど、『次があれば』とは。
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