契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「えー? 祐輔、尊敬してくれてるの?」
 美冬が首を傾げると槙野から即座に答えが返ってきた。

「してない」
「尊敬できるって今、言ったじゃない」
「気のせいだ」
 絶対気のせいなんかじゃないんだけど。

「とても仲がよろしいのね」
 くすくすっと品の良い笑い声。
 鈴を転がしたような声という表現があるけれどもまさにその表現にぴったりな声は、片倉の隣に座っている女性から聞こえたものだ。

 片倉は眉を寄せて苦笑して、美冬に彼女を紹介してくれた。

「僕の妻です」
片倉浅緋(かたくらあさひ)と申します」
 浅緋が綺麗な仕草で頭を下げるのを、一瞬見とれそうになった美冬も慌てて頭を下げる。

椿美冬(つばきみふゆ)と申します」
「美冬さん、とても素敵なお名前ね」
 ふんわりしていて一緒にいて和むような人だ。

 けれど美冬は気づいてしまった。そんな浅緋を槙野がとても優しい目で見ていることを。
(祐輔……?)

 美冬はずっと槙野の好みのタイプはナイスバディの美女なんだろうと思っていた。
 だってそんな人が槙野の隣にいたらきっととてもお似合いだ。
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