契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 けれど、槙野は美冬を『好みじゃない』と言ったのだ。
 もしもそれが、浅緋のようなタイプだったのだとしたら……。

 確かに私みたいのは好みじゃないわ。
 妙に納得してしまった。
 それに多分こんな素敵な女性になんて、勝てる訳がない。

 紅茶を飲むひとつひとつの仕草がエレガントで、隣にいる片倉に時折話しかけ、囁く時さえ可憐で、目が合うと美冬にもにこりと微笑んでくれる。

──素敵すぎる。

「まあ確かに、槙野がそこまで言う相手も珍しいね」
 片倉がそう口を開いて美冬はハッとした。

 つい、浅緋に見とれてしまっていたけれど、この場には槙野の上司である片倉もいるのだ。

「条件、と言うけれど恋愛にしろ婚姻にしろ意識無意識は別にしてどこかで条件には当てはめているものだ。二人が冷静にそれを見極めているのであれば僕は逆に素晴らしいことなんじゃないかと思うがね」

 意識無意識は別にして……。
「それってどういうことですか?」
そう尋ねた美冬を片倉は面白そうな顔で見返す。

「例えば、合コンのようなものがあったとしよう。美冬さんはどういう人を連れてきてほしいですか?」
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