契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「特にこれと言って希望は伝えません」
「どうして?」
「好みは? と聞かれても特にないから」
はあ!?と文句を言いかけた槙野を片倉は制する。
「じゃあ、あの人が来たらどうだろうか?」
あの人、とそっと片倉が指を差した人はなかなかお年を召したご老人だった。美冬は困ってうろたえる。
年齢的にも釣り合わないような気がするが、片倉が何を言いたいのかが分からない。
「それは……。あの、良い方かもしれませんけど、私よりももっとお似合いな素敵な方がいらっしゃるかと」
そうして見ていた目線の先で、ご老人はロビーに来た老婦人と一緒にどこかに行った。
「今のだって誰でもいい、というわけではない。無意識に選別しているんですよ。年齢、もっと細かく言えば、身長、顔の好み、仕草や接点があればその人が発する言葉なんかもね。だから槙野にとっても、美冬さんにとっても誰でもよかったわけではないお互いが良かった理由があるはずですよ」
片倉の穏やかな声は美冬の心にもすうっと染み込んだ。
「槙野がそういう選択をしたのは意外だけれど、この上もなく槙野らしいとも思う。心からお祝いするよ」
「ありがとう」
「どうして?」
「好みは? と聞かれても特にないから」
はあ!?と文句を言いかけた槙野を片倉は制する。
「じゃあ、あの人が来たらどうだろうか?」
あの人、とそっと片倉が指を差した人はなかなかお年を召したご老人だった。美冬は困ってうろたえる。
年齢的にも釣り合わないような気がするが、片倉が何を言いたいのかが分からない。
「それは……。あの、良い方かもしれませんけど、私よりももっとお似合いな素敵な方がいらっしゃるかと」
そうして見ていた目線の先で、ご老人はロビーに来た老婦人と一緒にどこかに行った。
「今のだって誰でもいい、というわけではない。無意識に選別しているんですよ。年齢、もっと細かく言えば、身長、顔の好み、仕草や接点があればその人が発する言葉なんかもね。だから槙野にとっても、美冬さんにとっても誰でもよかったわけではないお互いが良かった理由があるはずですよ」
片倉の穏やかな声は美冬の心にもすうっと染み込んだ。
「槙野がそういう選択をしたのは意外だけれど、この上もなく槙野らしいとも思う。心からお祝いするよ」
「ありがとう」