契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 ミルヴェイユにしてみたら、それだけだってとんでもない宣伝効果だ。

「時期については打ち合わせさせて頂いてもいいですか?」

 即座に杉村が反応する。
「では秘書から連絡させましょう」
 槙野はそう言って杉村に笑顔を向けた。

 杉村と石丸の二人が納得していようがしていまいが話を進めていくことには変わりはない。槙野は美冬の陰になり日向になり助けてくれている。

 ミルヴェイユが話題になることは美冬の助けになることでもあるのだ。

──助けられてばかりで本当に悔しいわ。

「美冬」
 ひそっと石丸に声を掛けられて美冬は彼に近づく。

「なに?」
「本当に結婚するの?」

「するわよ。みんな喜んでくれてるじゃない。諒は喜んでくれないの?」
「本当なら喜ばなきゃいけないんだろうけど、急すぎる」

 そこで石丸は「ただ……」と続けた。
「むっちゃ見てるね」
「そうね」
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