契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 槙野が二人の方をじっと見ている。
 ──だから目つきが悪いというのだ。

 美冬は怖くはないけれど、石丸は微妙な顔をしていた。

「異性と二人きりになるなって言われてるから」
 契約だけども。

 石丸から、ははっと笑い声が聞こえた。
「すごいヤキモチやきだな。じゃあ、あまりくっつかないようにする」

 そう言って石丸は美冬から距離を取って離れる。

「愛されてんならいい。おめでとう美冬」
「ありがとう」

「なんか美冬の結婚式って華やかになりそうだな。ドレスのデザインは任せてくれるってこと?」
「もちろん! よろしくね」

 美冬のドレスのデザインを考えるのは石丸しかいないのだ。

「腕が鳴るなー。あとで槙野さんに予算を相談させてもらおう」

 腕をぐるぐる回して嬉しそうにする石丸に、お金に糸目はつけないと思う、とは言えなかった美冬である。
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