契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「今頂いた宿題を必ずお持ちします」
 咄嗟に出た言葉だ。

 彼は眼鏡の奥の目をふっと細めた。
「お待ちしていますよ」

 その後も数人から質問が出たけれど、それ以降先ほどの2人が口をはさむことはなかった。
 それにしてもインパクトのある2人だったと思う。

 一通りの質疑応答を終えたら『グローバル・キャピタル・パートナーズ』の人達は会議室から出ていったので、3人で片づけを始めた。

「噂通り、CEOは冷静な方でしたね」
「え!? 杉村さんCEOを知っているの?」

「ええ。美冬さんの答え方から、ご存じかと思いました。キラキラしたお目目で『宿題をお持ちします!』とか言うからうちの社長はさすがだなあ……と」

 キラキラしたお目目って……。
 杉村にはそんな風に見えているのか、と思う。 

 しかし、話の内容から美冬も察する。
「眼鏡の人か……。割とあの中では若い方だったよね」

「そうですね。若きエリートとして有名です。あの年齢で小規模ながらもベンチャーキャピタルを運営されているのですから、相当なやり手ですし、お金持ちですよ」
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