契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 そもそも大手のアパレル会社でさえどんどん倒産していく中、ミルヴェイユは踏ん張っている方なのだ。

 アパレルは最先端過ぎても保守的過ぎてもいけない。ミルヴェイユは上手くニーズを拾っている。

 一方の美冬の頭の中を占めていたのは『相乗効果』である。以前言われたことについて美冬は考えていた。

 ミルヴェイユがグローバル・キャピタル・パートナーズと関わることによってそれぞれが単体で得られる以上の結果を上げるようなことだ。

 今まで自社でいかにいいものを作るか、いかにそれをうまく見せるか、そんなことばかり考えてきて相乗効果などは考えたことはなかった。

 美冬は今まで祖父の作ってくれたレールの上を歩いていたんだなと実感する。

 今回は自分で新たに何かをしなくてはいけないということにおそれと奮い立つような気持ちと、不安と暗中模索で手探りで進んでいるような感覚がある。
 そんなのは初めてだ。

 そこへコンコンとノックの音がした。
「あの……社長」
「はい」
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