契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「あの……ここはそんなに防音はされていませんので、声が漏れてしまうようなことはちょっと避けて頂けると」

「了解した」
「ちょっと! 真面目な顔で返事するのやめてよ!!」

 そんな美冬にはぐっと親指を上げて、杉村は丁寧に頭を下げて部屋を出ていく。

 杉村が何を考えているかは想像したくなくて美冬は頭を抱えそうになった。

「さて、ああ言ってるが期待に応えるべきか?」
「……っ! 何言って……」
「声が漏れるまではここではしないが」

 手を軽く引かれた美冬が槙野の胸の中に倒れこむと、包み込まれるように抱きしめられて、いたずらっぽい表情の槙野の顔が近づく。

 いつの間にか槙野のその表情に逆らえなくなっている美冬なのだ。

 つい美冬が目を閉じてしまうと、唇を重ねられていた。
 何度もついばむようにされたり緩く唇を舐められたりして、ふと開いてしまった口の中に侵入されているのだ。

 槙野のキスはいつも情熱的で求められている感じが美冬には心地いい。
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