契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 そう言って足元のカバンから資料を取り出して、ソファを指差すので美冬は頷いた。

 槙野の前に座ろうとすると隣に手を引かれる。やむなく美冬は槙野の隣に座ることにしたのだ。

「これは資料だ」
 そう言って槙野が渡してくれたものは、一冊のファイルだ。

 渡されたファイルを美冬は開いて確認してみる。

 それにはミルヴェイユの業績や売り上げなど数字がグラフ化されたものまで掲載されていてかなり細かく分析されていることが分かった。

「すごいわ……」
 美冬は目を見開いて感心する。そして食い入るようにファイルを見た。

「出資は難しいと言ったんだが、あれは正確ではない。正確には出資は必要ない。十分にまだまだ伸びしろのある会社なんだ」

 きっぱりと槙野がそう言って、美冬は肩の力がふうっと抜けた。
 槙野にはそう見えている、ということが美冬には嬉しかったのだ。

「そっか……まだまだ伸びしろがあるのね」
「嬉しそうだ」
「それはもちろんだよ」
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