契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「まあ、整ったお顔をされていたわよね」

 あの時のことを思い出しながら、美冬はため息をついて、パソコンをバッグに片付けた。

確かに優しそうに見えるけれど、切り捨てるべき時は切り捨てる判断力もありそうだった。
 あの人多分、笑顔で人を切れそう……。

「すごくモテるみたいですね。私は好みじゃないけど」

 そんな風に杉村がさらりと言うのに石丸の方が反応している。片付けの作業の手を止めて、その王子様のような顔が美冬を見た。

「え? 美冬、彼みたいなの好みなの?」
「そういう風に見てないから。それよりも落ち込んだよ。頑張っているつもりでも全然ダメダメなんだなー」

 その時、美冬の頭にあの目つきの鋭い男性の言葉がリフレインしてきた。
「シナジーってなに?」

「相乗効果ですね」
 さらりと杉村に返される。

「理恵さん、気づいてた?」
「まあ……。でもうちは困っているわけではないですし、それで美冬さんがお勉強になるかな、とも思いましたし、上手くいったらラッキーくらいの感じで」
 杉村は淡々としている。
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