契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 つまり、美冬といる時にその回数が多い、ということは落ち着かないということなのだろうか。

「スポーツしてた頃からのルーティンなんだろうな」
「スポーツ! 何してたの?」
「水泳。高校の途中でやめたけど」

 あまり聞いてほしくなさそうだったので美冬はそれでその会話はやめることにした。

 美冬はそれよりもその深呼吸の回数が美冬の前で多いことの方が気になったのだ。

「それって、その深呼吸が多いって私と一緒なのは落ち着かないってことかな」
「ああ。落ち着かないな」

 ががーん!である。
 とてもショックだ。

(いや、どうせ好みじゃないしね、契約なんだしね、ショックを受けることはないんだけどね。なんだろうすごーくへこむわ……)

 一方の槙野にしてみれば落ち着くわけがないのだ。

 お互いに単に条件が合ったからという理由で契約婚などしようと言い出したはいいが、実際に一緒にいたら活き活きしている美冬は可愛いしその割に自分をしっかりと持っていて、そんなところは魅力的だし、槙野が困るくらいだ。

 深呼吸でもしなければ息もできなくなりそうな時すらある。
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