契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それくらいに、美冬は可愛い。

 さっきも槙野の眉間に無意識に寄っていたシワを直すのに、美冬が腕を伸ばして顔がすごく近かったのだ。

 ほっそりした指が顔に触れて真剣な顔で槙野の眉間に触れているのを見たら、不埒な気持ちになりそうだった。

 そのまま腕を掴んでソファに押し倒したくなったくらいだ。
 だからこその深呼吸である。

 しかも、社員を守りたいとか信じてるとか頑張りたいとか。

──可愛すぎるんだよ。落ち着くわけがないだろうが!

 どうしたらいいんだろうか。婚約者が魅力的すぎる。

「祐輔?」
「ん?」

「ありがとう。メールの話も教えてもらってすごく助かったわ。悪い話じゃないのは良く分かったし。一緒に仕事するの、楽しみにしているね」

「美冬」
 槙野は堪えきれずにソファで隣に座っている美冬を肩から抱きしめる。

(抱きしめられたらこんなに安心するのに。こんなに落ち着くのに)
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