契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「うちも一部絡んでいて、それのレセプションパーティが今度、ビルの中のホールである予定なんだ。一緒に来てくれないか? 片倉も奥さんの浅緋さんを連れてくると言うし」

 浅緋さん……その名前を聞いて、美冬は固まってしまう。

 浅緋自体はとても素敵な人だ。結局あの後もミルヴェイユの服が気に入ったから、と何点か購入していってくれた。

けれど、あの時の槙野の表情が美冬には引っかかっている。

 素直に聞いたら教えてくれるかもしれないけれど、美冬にはそれはできなかった。

 あの人が好きだったとか言われたら、なんだか立ち直れないような気がするのだ。

「時期的に結婚の発表のニュースリリースの直後になるから、心の準備はしておいてくれ」
 そうなのだ。

 槙野のためにも会社のためにも美冬はそれなりの立場としてその場には立たなくてはいけない。

「分かったわ。パーティ用のドレスも用意しておくね」
「楽しみにしてる。その頃には婚約指輪もできていると思うから」

 ソファを立った槙野は美冬の額に軽くキスをしてから部屋を出ていった。
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