契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 なのに、耳元に聞こえた低い声は……
「俺に甘えるな……美冬」
 そんな声で。
 どういうこと?どういうことなの?

 美冬は聞きたかったけれど、眠気に逆らえずに眠りに落ちてしまったのだ。

 ◇◇◇

 そんな中、美冬はエス・ケイ・アールとの業務提携について検討を始めていた。

 正式に書面を交わし、お互いのプロジェクトの責任者とのミーティングをすることになっている。

 他にも槙野と一緒に出なくてはいけないレセプションパーティの衣装や、結婚式のこと、考えなくてはいけないことは山積みだった。
「ただいま」

「お帰りなさい」
 モフっとしたパーカーとショートパンツにソックスが美冬のルームウェアだ。それに今日は家でも作業していたので、ブルーライトカット眼鏡をしている。
 玄関にそんな美冬が出迎えてくれたのだ。

「祐輔? どうしたの? 疲れた?」
「いや……」

──可愛すぎかよ……。

 リビングに足を踏み入れた槙野は苦笑する。資料が散らばって、あちこちに付箋の貼ったメモが置いてある。
< 189 / 325 >

この作品をシェア

pagetop