契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
「見てやろうか?」
 そう言って槙野はジャケットを脱ぐ。

「いいの? だって帰ってきたばかりじゃない」
 ペタンとラグに座る美冬が果てしなく可愛い。それに仕事に一生懸命なところも。
(眼鏡とか、すっげー可愛い)

 早く二人きりでイチャイチャするには仕事を終わらせるしかないのだ。
「ほら、何に悩んでんだ?」
 ソファに座って散らばっている書類の付箋を確認する。

「あ、えっとね……」
 膝に置かれた手や、肩越しに見えるすんなりした足とか、無防備な素顔が槙野の目に入った。

「美冬……」
 名前を呼んで、ぎゅっと抱きしめたら、肩を押された。

 美冬の目が泳いでいる。
「見てくれるんじゃないの?」

 確かにそう言ったけれど。
「見ないなら、シャワーとか浴びてきたら……」
 どうしたのだろうか?

 抱きしめたら拒否されるように肩を押されたのだ。

 シャワーってもしかして、汗臭いとか!?
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