契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 え?ホントに?即答!?

 槙野が肩を落としつつバスルームに向かうのに、美冬は先日の言葉に頭を占領されていたのだ。

『甘えるな……美冬』

 槙野は面倒見がいいから、美冬が甘えたら、きっとどこまでも見てくれようとしてしまう。

 美冬の仕事の相談や、ドレスの相談なんてできるわけがない。

 書類を片付けた美冬はソファでクマを抱いてしゅん、とする。

──私、なにやってるんだろう。

 槙野に触れられてもいい、と思っているのに。
 契約だったはずなのに。

 頼りがいのある笑顔や、意外と面倒見の良いところとか、仕事がすっごくできるところとか、とてもとても惹かれていた。

 そんな槙野に触れられるのも嫌じゃない。
 ちょっと意地悪で、容赦のない触れ方で、あの色気たっぷりな雰囲気で迫られるのは悪くはない……のに、押し退けてしまった。

 違う、触れられてもいいんじゃない。
 触れられたいんだ。
──私、祐輔に触れられたい。
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