契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 それに気づいたらクマをぎゅううっと抱きしめてしまっていた。
 そうして、ふう……とため息をつく。
「寝よ……」

 バスルームで念入りに洗って寝室に入った槙野は足を止める。
 ベッドの上ですやすやと寝ている美冬はあのいつものクマをぎゅっと抱きしめているのだ。

 頼む、頼むから俺に抱きついてくれないか?
 そして寝付きが良すぎる!

 美冬の腕の中のクマに『お前なにしてんの?』と小馬鹿にされているような気がして、槙野は美冬に背中を向けて布団に潜り込んだ。
 ベッドの中がほっこり温かいのさえ、切ない。

「はーっ……」
 さすがに深いため息が出た。
 なにしてんだろうな……。
 ぬいぐるみのクマに負けるとか。

 温かい布団とぬくもりを感じるのになんだか、妙に寂しい気持ちになってしまった槙野なのだった。



 美冬が朝目を開けた時、槙野にしっかりと後ろから抱きしめられていた上に、胸のところにある腕に美冬もきゅうっと抱きついていた。

 そっと身体を動かそうとすると、後ろから槙野にぎゅうっとされて美冬は身動きできなくなる。
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