契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした

15.ま、まさか加齢sy……

 迎えの車の中で、槙野はため息をついていた。
 なんでも開けっぴろげに相談してくれるところが美冬のいいところだった。

 悩みがあるように見えるのに、何かを隠している。それが槙野にはひどくもどかしい。
 なぜ言ってくれないのか……。

──言いにくいのか?

 言いにくいこと……まさか、本当に加齢しゅ……いや、それはない、それは多分。
 事実だったら相当に言いづらいとは思うがそれは……多分ない、はず。

 槙野の車を運転してくれているのは秘書室の社員だ。

「日中はお車をお使いになるんですね」
「そうだ。14時に行かなくてはいけないところがある」

 14時というとオフィスではコアタイムになる。槙野のその時間を空けるために秘書は苦心して今日のこの時間の出勤になったのだ。

「聞きづらいことを聞いていいか?」
「はい」
 この秘書は割と言いにくいこともズバリと言ってくれるタイプだ。

「その……俺は」
 加齢臭があるだろうかとは、やはり秘書には聞けない。
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