契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 笑いすぎて涙まで拭いているのはどういうことか。

「すっごく、笑うんだけど! どこをどうしたらそういう発想になるんだ。嗅いでやろうか?」
「嗅いでくれ!」
 即答したら、さらに笑われた。

 こっちは真剣だというのに!
「それは絶対ないから、嗅ぐまでもなく安心していい。でもそんなことを疑うくらいまで美冬さんを信頼しているのがすごい」
 片倉は感心したような顔をしている。

「信頼~?」
「ありえないことしか思い当たらないんだろう? 他に理由なんてないと思っているわけだ。それって信頼の証じゃないのか?」
 片倉はそう言って槙野に向かって首を傾げた。

 それにしても加齢……と片倉は思い出したのかまた笑っている。

「物事の本質的を捉えるのに長けている槙野が調子っぱずれになっているのは面白いな」
「思い通りにいかない。最初からあいつはそうだ」

 すごく警戒していたくせに、契約婚など了承したり、一緒にいて楽しそうにしたりする。かと思うと拒否されたり……確かに拒否されたことはショックではあるのだが。

 ん?なんかショックだ。とても衝撃を受けている。
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