契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした
 14時の約束は宝飾店だった。注文した指輪が出来てきたと連絡があったのだ。槙野は直接取りに行くつもりにしていた。

 数日後にはレセプションパーティがある。
 槙野はその時に美冬に指輪を渡して、自分の気持ちをきちんと伝えようと思ったのだ。



 こんな時に限って、と槙野はイライラしていた。

 急ぐために乗った高速で事故が発生していたのだ。レセプションのスタート前に美冬を迎えに行く予定だったのに、行けなくなってしまったのである。

 レセプションパーティの会場にはとても素敵なガーデンが併設していることを槙野は知っている。

 早めに行って、そのガーデンで改めて気持ちを伝えて、指輪を付け替えてもらおうと思っていたのに。

 美冬は会社で準備を済ませて、タクシーで会場に向かっているとメールが入る。
『本当にごめん!』
 槙野は即座に返信を送った。美冬からも即返信が来る。

『交通事情だもの仕方ないよ。会場には片倉さんも奥様もいるし、待ってるね。大丈夫だから、気をつけて来て』
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